最高裁判所第三小法廷 昭和32年(あ)3270号 判決 1961年4月11日
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
弁護人森鋼平の上告趣意第一点は、原判決が本件被告人の所為につき職業安定法六三条二号を適用処断した第一審判決を支持したのは憲法二二条に違反するというにある。ところで同法三二条につき昭和二四年新(れ)第七号同二五年六月二一日当裁判所大法廷判決(刑集四巻六号一〇四九頁)は、職業安定法は公共の福祉のため自由有料職業紹介の弊害を除去し、各人にその能力に応じ適当な職業を与えもって職業の安定を図らんとするもので、その目的のため従来弊害の多かった有料職業紹介を禁じ公の機関によって無料にそして公正に職業の紹介をすることにしたもので、憲法二二条に違反するものでないとするのである。いわんや職業安定法六三条二号のごとく、有料であると無料であるとをとわず、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介をする行為を禁止することが右憲法の条項に違反するものでないことは右大法廷判決の趣旨に徴して明らかである。それゆえ論旨は理由がない。
同第二点は、被告人の所為は職業安定法六三条二号に規定する職業紹介に当らないという事実誤認、単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。〔同法にいう職業紹介とは、求人および求職の申込を受けて求人者と求職者の間に介在し、両者間における雇用関係成立のための便宜をはかり、その成立を容易ならしめる行為を指称するもので、本件被告人の所為がこれにあたることはいうまでもない(昭和二八年(あ)第四七八七号同三〇年一〇月四日第三小法廷決定、刑集九巻一一号二一五〇頁参照)。〕
同第三点は、量刑不当の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一)